POTZ POKER Pro
RFIDポーカー配信システム「POTZ POKER PRO」のディーラー操作用タブレットUIを、ゼロから設計しました。前例の少ないプロダクトにおいて、「ディーラーが配信を回せる」という新しい運用そのものを成立させることが、このプロジェクトの核心でした。

Project Overview
Client: 株式会社POTZ
Industry: エンターテインメント / ポーカー配信システム
Timeline: 2025年
My Role: UI/UXデザイナー(単独 / 課題定義からビジュアル設計まで)
Problem
「ディーラーが操作する」前例がなかった
ポーカー配信システムには長年の業界標準が存在しますが、それらは配信オペレーター(専任スタッフ)が操作することを前提に設計されていました。ディーラーが自らシステムを操作するという発想は、ほとんど存在しませんでした。 POTZ POKER Proが目指したのは、ここを覆すことです。ディーラーがタブレットで直接操作できるようにすれば、専任オペレーターを置けない小規模な会場でも、少人数で配信を回せるようになる。これは事業面で大きな価値を持つ方向性でした。 参考にできる完成形が業界に乏しく、ボタンの優先順位やレイアウトの「正解」が確立されていない。ゼロから判断を積み上げる必要がありました。
The Core Tension
価値とトレードオフが同時に生まれた
この設計には構造的な緊張関係がありました。オペレーターがいなくなる分、その仕事はディーラーに乗ります。ディーラーは本来の進行業務に加えて配信操作も担う。「人を減らせる」という価値は、そのまま「ディーラーの負担増」というリスクと表裏一体でした。 だからこのUIの仕事は、見た目を整えることではありません。ディーラーに乗る負担を、インターフェースでどこまで吸収できるか。ここが設計の全てでした。 操作環境の物理的制約: ・片手操作 — もう一方の手は進行業務に使われている ・暗い会場 — 配信現場の照明は落とされている ・速いテンポ — ゲームは止まらない。考える時間はない ・ミスが許されない — 配信に直結する操作である
Approach
- ・アクションを画面下部に大きく横一列で固定 — FOLD / CHECK CALL / BET RAISE / ALL-IN を画面下部に大きく並べ、ディーラーが手元を見ずに画面下を「触る」だけで操作を完結できるようにした。片手・暗所・高速という制約への直接的な答え。
- ・文字ではなく「色」で瞬間識別 — 各アクションに固有の色を割り当て、文字を読まずに色で判断できるようにした。暗所かつ高速な現場では、色での識別が文字より速い。重要アクション(ALL-IN)にはプロダクトのプライマリカラーであるライムイエローを使用し、ブランドの一貫性と視認性の優先順位を両立。
- ・「ポジション」と「アクション中」の表示を分離 — Dバッジ(ディーラーボタンの位置)と黄色い枠(今アクション中のプレイヤー)を別々の表現に分けた。役割の異なる情報を一つの記号に混ぜると迷いが生まれるため、見え方を分けることで「今、誰の番か」を考えずに把握できるようにした。
- ・ALL-INに確認ダイアログを「あえて」挟まない — 一般的なUI設計では後戻りできない操作に確認を挟むのが定石だが、あえて挟まなかった。リアルタイムで止まらないゲームにおいて、確認ダイアログは「止める」操作であり、止めることが必ずしも安全とは限らない。もし押し間違えても「BACK」で即座に戻り、サイドアクションを入力し直せる導線を用意した。「ミスを防ぐ」のではなく、「ミスから1秒で復帰できる」設計にした。
Result
「ミスは起きる。でも、設計で吸収できている」
実際の現場では押し間違いが発生します。スクリーンを見ずに操作してアクションがズレる、音声AIが誤認識する、配線や手が誤ってスクリーンに触れる——こうした誤タップは現場の性質上どうしても起こります。 重要なのは、これらのミスは「事前の確認ダイアログ」では防げない種類のものだったという点です。スクリーンを見ていなければ確認画面も見ない。物理接触による誤タップは確認画面でも再発しうる。だからこそ「止めて防ぐ」のではなく「戻して直す」という設計が正しく機能しました。 現場の担当者によれば、押し間違いが起きても「BACK」ですぐにアクションを入力し直せるため、クリティカルな問題にはなっていないとのこと。当初の設計判断が現場で実証された形です。
Next Challenge
焦点は「操作の速さ」から「ミスの可視性」へ
一方で、現場から見えてきた新しい課題があります。最も厄介なのは「誤タップそのもの」ではなく、入力ミスに気づかないまま進行してしまうことでした。気づければ BACK で直せるが、気づけないまま進むと修正が非常に煩雑になり、場合によっては修正できなくなります。 これは設計の焦点が次のフェーズに移ったことを意味します。 ・第1フェーズ(達成): 操作の負担を下げる — 読ませない・迷わせない・止めない ・第2フェーズ(進行中): ミスの可視性を上げる — 間違いに「気づける」ようにする 「速く操作できる」を突き詰めた先に「間違いに気づける」という次のテーマが現れた。前例の少ないプロダクトを、現場と一緒に一段ずつ進化させています。



